「サユ達、夏期講習受けんの? サユが受けるなら、俺も受けようかな」
勝手に会話に入ってきた涼太が、あたしの顔を見てにっと笑う。
「あんたは別に夏期講習なんて関係ないでしょ?」
「そうだけど、夏休みも会えたほうが楽しいじゃん。な?」
涼太はあたしの冷たい眼差しにも声音にも、ちっとも怯まない。
にこにこと笑ったまま、亜未に同意を求めた。
「不純な動機で参加されても困るんですけど。みんな真面目に勉強しに――」
「うん、夏休みもこうやって顔を合わせれたほうが勉強もはかどる気がするよね。涼太も参加しようよ。数学好きでしょ? あたし達と一緒に受けようよ」
亜未が、涼太への反論を遮る。
涼太に誘いかける亜未の声は、やけに嬉しそうに弾んでいた。
「数学? いいよ、俺も一緒に受ける」
「じゃぁ、あたし申し込んどくよ!」
「亜未。あたし、数学は受けないよ?」
亜未に言ったけれど、夏休みにも無条件に涼太に会えることが決まって舞い上がっている彼女は、あたしの話なんて聞いちゃいなかった。