暗い公園の中を速足で歩いていると、ふと街灯に照らされた白いベンチが視界に映る。
あたしは足を止めると、灯りに照らされている無人のベンチをじっと見つめた。
この白いベンチを見ると、あの寒い冬の日のことを思い出してしまう。
一度目にそこを通りかかったときに見たのは、小さな箱を握り締めてずっとそこに座り込んでいた横顔の綺麗な男の人。凍えるほど寒い中、白くて長い息を吐きながら、それでも幸せに満ちた表情をしていた。
同じ冬の日。二度目にそこを通りかかったときに見たのは、ショートヘアの女の人の哀しそうな横顔と、綺麗な男の人の絶望したような横顔。
それから、金色のリボンがかかった綺麗な包装紙に包まれた小さな箱。
その日はとても寒くて、暗くなった空からは雪が舞い落ち始めていた。
白いベンチに置き去りにされた小箱に、さらさらと舞い落ちてくる粉雪。
あの横顔の綺麗な彼は、今どうしているのだろう────……
寒い冬の日に見た光景を思い出しながら、冴島先生が去っていった方を振り返った。