ちゃんとした公道を通ると、家まで帰るのに公園の外側をぐるりと一周することになる。
だから駅方面から帰ってきたときは、公園の中を突き抜けた方が近道なのだ。
「おぅ、暗いから気をつけろよ」
煙草を落として火を踏み消した冴島先生が、あたしに軽く手を挙げる。
「ポイ捨てはダメですよ」
足元でぐりぐりと潰されている煙草を冷ややかな目で見つていると、冴島先生が面倒くさそうな仕草で煙草を拾い上げて、ポケットから出した携帯灰皿に吸い殻を入れた。
「わかってるよ。けど、こんなに家近いのに今までよく出会わなかったよな。これからも俺に出会わねぇように気をつけろよ。面倒だから」
「それはこっちのセリフです」
あたしが睨むと、冴島先生は口元にうっすらを笑みを浮かべた。そして、もう一度軽く手を挙げてから去って行く。
あれで、学校では真面目に数学教えてるんだから驚きだ。
冴島先生の背中を呆れ顔で見送ると、あたしは近道するために、公園に足を踏み入れた。