同じ駅で降りたあたしと冴島先生は、改札を出てから歩いていく方向もしばらく同じだった。
「2丁目の公園の向こうなんだよ」
「あたしの家は、その公園のほぼ隣です」
冴島先生とあたしが目指すその公園は、駅から歩いて10分くらいの距離にある。
子ども達がサッカーやバスケができるくらいの、広いグラウンドスペースのある公園だった。
「ずっとこの辺に住んでるんですか?」
別に全然興味なんてなかったけど、社交辞令的に一応訊ねてみる。
「あぁ、そうだな。けど、そろそろ引っ越すかも」
冴島先生はそう答えながら、ポケットから煙草の箱とライターを取り出して、その一本に火をつけた。
冴島先生が吐く煙草の白い煙が、暗い夜道に揺蕩う。
煙草を咥えては煙を吐き出す彼の隣をただ黙って歩いていると、いつの間にか2丁目の公園の前にたどり着いた。
「じゃぁ、あたしはここで。いつもこの公園を突き抜けて帰るんで」
あたしは公園の入り口の前で立ち止まると、冴島先生に向かって軽く頭をさげた。