パフェを掬ったスプーンを咥えながら、コーヒーを啜っている冴島先生をちらっと見ると、彼がこっちに視線を向けた。
ぶつかり合った視線にドキッとして、慌てて俯く。
目が合ったことだって嫌だし、一瞬でも「見ていた」と思われることが嫌だ。
それなのに、冴島先生のほうからあたしに声をかけてきた。
「あのさぁ」
個人面談の途中で教室を飛び出したから、文句を言われるのかな……
俯いたままぎゅっと目を閉じたとき、冴島先生の気怠げな声があたしの耳に届いた。
「そういうのってふつう、先にアイスから食わねぇ?」
「へ?」
「さっきからすげぇ溶けてて、そればっかり気になるんだけど」
冴島先生がパフェの入れ物を指さす。
ふと見ると、透明なグラスの横から溶け出したバニラアイスクリームが筋になって垂れ始めていた。