「ねぇねぇ。大ちゃん、カッコいいよね?」
最初に黄色い声を上げた里見萌菜が、目をキラキラと輝かせながら、同じ班のあたしと武田亜未に同意を求めてくる。
「どうだろ」
「まぁ、今年の実習生の中では一番イケメンかな」
あたしと亜未は一度顔を見合わせると、愛想の良さそうな笑顔で生徒達に話しかけて回っている冴島大輔に視線を向けた。
切れ長の目に、すっと通った鼻筋。薄い唇は、笑うと意外に大きい。
いかにも「実習のために染めました!」って感じの黒い髪の毛の先はゆるく遊ばせるようにセットされていて、横に少し流すようにしている前髪は軽く目にかかるくらいに長い。
数学担当の教育実習生としてやってきた彼は、その顔立ちと真面目そうな他の教育実習生たちとは少し違った緩い雰囲気のせいで、初めからずっと目立っていた。
話しかけると「先生」というよりも「学生」のノリで生徒に接してくれるとかで、男子からも女子からもいつの間にか親しげに「大ちゃん」と呼ばれるようになっていた。