だけど最近は、涼太といると亜未のことが気にかかってしまう。
こんな気持ちになるのは嫌だから、涼太に対する態度に気をつけているのに。
涼太はあたしがどんな態度をとろうとお構いなしで、いつだって必要以上に馴れ馴れしい。
「サユ、次は俺もストライク取るから見てて!」
レーンの前でボールを構えた涼太が子どもみたいに無邪気に笑った。
見てるよ。見てる。
ボールを構えた涼太の背中を見つめながら、声には出さず、心の中でそう繰り返す。
ふぅっと息をついて呼吸を整えた涼太が、真剣な目をしてボールを投げる。
ボールがレーンの上を回転しながら勢いよく転がっていく。
ガシャンという衝撃音が聞こえた瞬間、涼太が満面の笑みであたしを振り返った。
「サユ、見た? ストライク!」
あたしに笑いかける涼太の声が弾む。
ほら、やっぱり。そんなふうに笑われたら困る。
どんな表情で応えたらいいのかわからないから。
あたしは数秒迷ったあと、涼太に向かって困ったような笑顔を返す。
あたしが涼太に笑い返すのは、かなりひさしぶりのことだった。