ピンを全て倒してスペアを取った涼太が嬉しそうにあたしを振り返る。
こんなときはきっと、笑顔を返してハイタッチでもしてあげるところなんだろうけど。
あたしは腕を組み、仏頂面で座ったまま動かなかった。
「ちょっとは楽しそうな顔すれば? ここは『涼太すごい!!』って歓声あげて立ち上がるとこだと思うんだけど」
「ふぅん」
興味なさそうにそう言うと、苦笑いを浮かべた涼太があたしの横に座った。
「次、サユの番」
涼太があたしを見てにこりと笑う。
あたしは笑いかけてくる涼太を無視してすっと立ち上がると、特に狙いも定めずに適当にボールを前に転がした。
もともとそんなにボウリングが得意なわけじゃないし、力がないから投球速度はかなり遅い。
だけど、あたしが転がしたボールは運よく真っ直ぐに真っ直ぐに転がって、ちょうど真ん中のピンに綺麗に当たった。