1ゲームだけ。
入り口の前で涼太にそう念を押して、ボウリング場の中に入る。
夕方のボウリング場は、制服姿の学生や大学生でそれなりに混んでいた。
「みんな案外暇なんだね」
ボウリング用の靴を受け取りながらぼそりと呟くと、隣に立っていた涼太がぷっと吹き出した。
「俺とサユもな」
「あたしは暇じゃない。仕方なく付き合ってるだけ」
あたしはいつまでもへらへら笑っている涼太を睨むと、一人でさっさと割り振られたレーンに向かって歩いた。
とっととゲームを終わらせて帰ろう。
腕を組んで、不機嫌な顔で、レーンの傍に備え付けられた椅子に座る。
先に投げるのは涼太。何をやらせても卒なくこなす涼太は、ボウリングの腕前もなかなかだった。
全てストライク……とはいかないけど、2投目できっちりスペアをとってくる。