「あ、ちょっと待てよ。サユ」
涼太が、足早に歩いていくあたしを慌てて追いかけてくる。
「待ってたっつってんのに、なんで一人で帰ろうとするんだよ」
「一人で帰りたいから」
追いかけてくる涼太を振り返らずに答えると、彼が走ってきてあたしの隣にぴったりと並んだ。
「なぁ、一緒に帰ろうぜ。途中まで一緒の方向だし、遊んで帰んない?」
あたしの隣に並んだ涼太が、にこにこ笑顔で誘いかけてくる。
「聞こえなかった? あたし、一人で帰るって言ったんだけど」
冷たい声で答えて、歩くスピードを速める。
けれど涼太は、あたしが速めたスピードに合わせてぴったり隣についてきた。
「いいじゃん、たまには。1年の頃は、遊んで帰ったりしただろ」
「それは、あんたがしつこいから仕方なく遊んであげてたのよ」
隣をぴったりつけてくる涼太を煩わしげに見やる。
思いきり迷惑そうに見てやったのに、それでも涼太はあたしにへらへらと笑いかけてきた。