「何?」
「なんだよ、お前。なんか怒ってんの?」
「別に」
「別にって、明らかに怒ってんじゃん。さっき、個人面談だったんだろ? 大ちゃんに、俺のあとがサユだって聞いたから待ってたんだよ」
にやけた顔の涼太の口から冴島先生の名前が出てきて、ただでさえ怒っているあたしの苛立ちが増す。
「あたしの前であの先生の名前を口にしないで」
「何? なんか言われたの? サユって、なんでか大ちゃんのこと異常に嫌ってるよな」
「嫌ってるっていうか、もう存在自体が嫌なの。あんただっているでしょ、一人くらいそういう人」
「んー、どうだろ」
涼太はちょっと考えたあと、首を傾げてへらっと笑った。
「あぁ、あんたにはいないか。そういうの」
あたしは冷たい目で涼太を一瞥すると、彼を置いて一人で歩き始めた。