それはあたしが進路希望を書いた用紙で、そこには見覚えのある可愛げのない角ばった字が横一列に並んでいた。

「今の偏差値で受かる一番レベルの高い大学、ね。まぁ、わからなくもないけど。まだ夏休み前だし、頑張りようはいくらでもあるんだから、もっと明確な目標を設定したほうがやる気も出るんじゃねぇの?」

冴島先生がもっともらしいことをもっともらしく言ってくる。

「夏休み中にオープンキャンパスとか行ってみれば? 何学部行きたいとか、そういう希望はねぇの?」
「数学とか理系科目は苦手だから、文系だったらどこでも……」

しかめっ面でボソッと答えると、冴島先生が顔を上げてあたしをじっと見てきた。

「ふぅん」

しばらくあたしをじっと見たあと、冴島先生が視線を落とす。

そして、あたしの前に置いてある進路希望の紙を自分の手元に引き戻した。

「宮坂、お前の将来の夢は?」

冴島先生があたしの顔を見ずに、唐突にそう訊ねてくる。

「え……」