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「なんで柴崎先生じゃないんですか?」
進路についての個人面談を受けに教室に入ったあたしは、そこに冴島先生の姿を見つけてしかめっ面になった。
「柴崎先生は緊急の会議が入っちゃったんだってさ。だから、今日は俺が代理」
そんな話、聞いてない。
午後の授業が終わったあとのHRで、柴崎先生はそんなこと一言も言ってなかった。
あたしは、教室の真ん中に向かい合わせでセッティングされた2台の机の向こうにエラそうに腰掛けている冴島先生を睨むと、無言で教室を出てドアを閉めた。
あたしが進路相談したいのは担任の柴崎先生であって、チャラそうな副担任じゃない。
明日柴崎先生に頼んで、個人面談の日を改めて設定しなおしてもらおう。
しかめ面のままでその場を立ち去ろうとすると、背後で教室のドアが勢いよく開いた。
「宮坂、なんで入って来ねぇんだよ。あとが詰まってるんだから、とっととしろ」
ドアから顔を出した冴島先生が、あたしの二の腕をつかんで教室の中に無理やり引きずり込む。
「ちょっと! 離してください。あたしにはあなたに相談することなんて何もありませんから」