「亜未は?」
「あたしは涼太と同じところがいいなぁなんて思ってたけど……涼太は専門学校なんだよね。あたしも美容師になろうかな」
亜未が、教室の端っこで上原くんとバカ笑いしている涼太に視線を向ける。
「何言ってんの」
亜未の視線を追いながら呆れ顔で答えたあたしだけど、彼女に偉そうなことを言える立場じゃないことは自分でよくわかっていた。
『今の偏差値で受かる一番レベルの高い大学』
裏返した手元の用紙には、角ばった可愛げのない文字でそう書いてある。あたしが書いてることも、亜未が思ってることと大差ない。
多少現実を見る目がついている18歳のあたし達は、大人じゃないけど、叶う可能性のない夢を見ていられるほど子どもじゃない。
亜未の視線の先にいる涼太を見ていると、それに気付いた彼がにっこりと笑って手を振ってきた。
「あ、気付いてくれた」
亜未が嬉しそうに言って、涼太に手を振り返す。
だけどあたしは、笑顔の涼太からすっと視線を逸らした。