写真は、高校2年生のときの文化祭で撮ったもので、カメラマンは当時同じクラスだった里見 萌菜。
文化祭のあと、彼女が焼き増しした写真をあたし達4人全員に配ってくれた。
もともと、写真を持ち歩く趣味はない。だけどこの写真だけは、ずっと手帳に挟んである。
去年の手帳から今年の手帳に新調したときも、この写真だけはそのまま新しい手帳に挟み直した。
わざわざ、挟み直したのだ。
あたしはその理由に本当はちゃんと気付いて。それでいて、気付かないふりをしている。
高2の文化祭でこの写真を撮ったあと、亜未があたしに打ち明けてきた。
「ねぇ、紗幸希。紗幸希、本当は涼太のことどう思ってる?あたし、涼太のこと好きなんだ……」
亜未が頬を赤らめて俯く。
そうなんだ……。うん、ずっとそうなんじゃないかと思ってたよ。亜未はすぐ表情に出るよね。頑張りなよ。
あのとき、確かにあたしの胸は少し疼いた。
だけど、それはほんの少しだけ。気付くかどうかも微妙なくらいの痛み。
だってあたしは、高1の初めからずっと亜未の気持ちに気付いてたんだから。
『どっちが宮坂の彼氏?』
冴島先生のにやついた顔が脳裏にちらつく。彼の顔を思い出すと、なんだか胸やけがした。