あたしは強い口調で否定すると、冴島先生がまだ手に持っている手帳をひったくるように奪った。
それから、まだ机の上に散らかっているノートや教科書類を鞄の中に乱暴に押し込む。
最低。やっぱりあたしは、この先生のことを好きになれない。
一刻も早く教室から立ち去りたい。彼と同じ空気を吸うのも嫌だった。
最後に残った教科書を鞄の中に詰め込もうとしたとき、ページの間から何かが少し重たい音を立てて床に落ちる。
「あ、やっぱ挟まってんじゃん」
教科書から落ちたのは、あたしがさっきからずっと探していたパスケースだった。
腰を曲げて足元に落ちたパスケースを拾い上げた冴島先生が、それをあたしのほうに差し出した。
「ん。じゃぁ、気をつけて帰れよ」
冴島先生がにこっと笑う。