「見ましたけど……」
「ふぅん」

腕組みしながら頷いた冴島先生が、大股であたしの机に近づいてくる。それから机の上にあるあたしの鞄をジッと睨んだかと思うと、いきなりそれをつかんで、思いきりよくひっくり返した。

「ちょ……何すんのよっ!」

突然の奇行を止める間もなく、あたしの鞄の中身が机の上にぶちまけられる。

目の前に散布するのは、教科書やノート類、財布にスマホ。手帳にポーチ。お弁当箱が入った巾着袋。

自分では絶対しないような、乱暴なやり方に心底腹が立った。

「ちょっと!勝手にこんなことするのやめてください!!」

目をつりあげながら声を上げ、空っぽになった鞄を冴島先生の手からひったくる。

机の上に散らばる荷物を元通りに詰め込もうとすると、冴島先生があたしのノートや教科書を許可なく手にとって、ひっくり返してバサバサとやってみたり、パラパラとページを捲ったりし始めた。

「あぁ、ちょっと待てよ。案外こういうノートとか手帳の間とかに挟まってたりするんだって」
「だからって、人のものを乱暴に扱いすぎです!」

強く抗議すると、持っていた英語のノートの中を確かめ終えた冴島先生が今度は手帳に手を伸ばす。