「お前、綺麗な顔して言うこときついな」
「そんなことないですよ」
「で?忘れ物探してるなら一緒に探してやるけど」

無言で驚きの表情を浮かべると、冴島先生がおかしそうに首を傾げた。

「違うのか?」

小首を傾げて薄く笑う彼の目が、あたしを揶揄っているような気がして、少し苛立つ。

「パスケースを探してます」

ぼそりとそう答えると、冴島先生がまたクッと笑ってから、パスケースを探すためにあたしの周囲を探り始めた。

「何色ー?最後に見たのいつ?」
「茶色。たぶん、朝見たきり」
「ふーん」

あまり興味なさそうな相槌を打った冴島先生が、教室の床に膝をつく。

意外にも真面目に探してくれるつもりがあるらしく、机や椅子の下にパスケースが落ちていないから見てくれた。

「下には落ちてなさそうだな。なぁ、宮坂。その中はほんとにちゃんと見た?」

冴島先生が、ズボンの膝についた埃を払いながら立ち上がる。それから、机の上に無造作に置いてあるあたしの鞄を指差した。