「消したはずの教室の電気がついてるからなんでかと思ったら、宮坂か。なんか忘れ物?」

冴島先生が面倒さそうにあたしに問いかけながら、教室の中に入ってくる。

「いえ、ちょっと……」

冴島先生と1対1で話すのは初めてだった。

あたしは冴島先生が好きじゃないから、できればあまり積極的に関わりたくない。それなのに、彼はあたしの意に反してどんどんこっちへ歩み寄ってくる。

「忘れ物じゃないならとっと教室出ろよ」

あたしに近づいてきた彼は、先生らしくない冷たく面倒臭そうな声でそう言った。

普段女子生徒の前では笑顔を振り撒いてるくせに。今目の前にいる冴島先生は、思ってたよりも感じが悪い。

「先生には関係ないじゃないですか。用が済んだら勝手に出て行くので、放っといてください」

あたしも冴島先生に負けないくらい冷たい声で答えると、彼が心底面倒くさそうにため息をついた。