駅から学校までは歩くと結構遠い。

あたしは一戸建ての連なる住宅街を通り過ぎると、学校まで続く急勾配を足早に登った。

明日、筋肉痛かもな……。そんなことを考えながらようやく学校にたどり着いたときには、校庭には誰もおらず、校舎内もシンと静まり返っていた。

夕方の学校は、廊下が薄暗くてなんだか不気味だ。

あたしは階段を駆け上がると、教室へと急いだ。

パスケースを出すことなんてめったにないけど、あるとしたら机の中かロッカーだ。

だけど、机とロッカーの中身を全部出して丁寧に探してみても、パスケースは見つからなかった。

どこにいったんだろう……。学校に忘れたと思ったけど、うっかりポケットに入っていたりして。

念のために制服のポケットの中を探っていると、閉めてあった教室の後ろのドアがゆっくりと動いた。

「ひゃっ!」

びっくりして悲鳴をあげると、半開きになったドアの隙間から誰かが顔を覗かせる。

「なんだよ、その幽霊でも見たような悲鳴は」

呆れた声でそう言ったのは、冴島先生だった。