「へぇ」
上原くんは、あたしの進路を肯定も否定もしなかった。
「上原くんは?行きたいとこあるの?」
あたし達が通っている高校は、特別に頭のいい人達ばかりが集まった超進学校ってわけじゃない。
だけど、全校生の7〜8割くらいがレベルの違いこそあれ、大学へ進学する。中途半端なレベルの進学校だ。
部活をしたり、適当に遊んだりしながら高校生活を2年過ごして、3年生になった今。
『将来の夢』を見据えて進学先を……なんていわれても、正直なところどうしたらいいのかわからない。
あたしの小さいときの将来の夢ってなんだったっけ……
小さいときの夢について考えていると、昼間見た涼太のキラキラした顔が思い出したくもないのに勝手に思い浮かんだ。
『美容師になりたい』
そう言って笑う涼太に無性にイラついたあたし。
あたしは、将来の夢がちゃんと見えているあいつに嫉妬したのかもしれない。
それから、そんな彼のことを素直に「すごい」と褒めることができる亜未にも。
バカみたい。あたしは昼間の自分を思い出して、ため息をついた。