「宮坂さん」

放課後。駅に向かって一人で歩いていると、後ろから上原くんに呼び止められた。

「一人?」

隣に並んだ彼を見ながら、コクンと頷く。

「上原くんも一人?」
「うん、図書室寄ってたから。宮坂さんは?」
「あたしはわからない英語の問題を質問に行ってた。柴崎先生のとこ」

担任のベテラン教師の名前を出すと、上原君が笑って頷いた。

「宮坂さん、すごい頑張って勉強してるよね。受験生っていってもまだ夏休み前だし、本気モードになってるやつ少ないのに」
「家に帰っても暇だからね」

あたしが真顔で答えると、上原くんは優しそうなその顔に少し苦笑いを浮かべた。

「宮坂さん、どこ狙ってるの?」

上原くんに訊ねられて、答えに迷う。だけど少し考えてから、こう答えた。

「夏休み後の自分の偏差値である程度決めると思う。特にすごく行きたいところがあるわけではないけど、大学は出ときたいから。あたしの実力でいける、最大限に偏差値が高いとこだったらどこでもいいかな」