「涼太って、意外に頭いいよね」

数学の授業が終わったあと、亜未が涼太の席に近づいていってそう言った。

一人で涼太に話しかけに行けばいいのに、亜未はあたしのことまで一緒に引っ張っていく。

面倒くさそうな顔で亜未の横に立っていると、涼太があたしを見上げてニヤリとした。

「サユ、ちょっとは俺のこと見直した?」
「別に。今までと変わらないけど」

低い声でぼそっと答えると、涼太がわざとらしく眉根を寄せる。

「えぇ?見直しただろ。ちょっといいなってときめいただろ!」

あたしはケラケラと笑っている涼太をじっと見たあと、にこりともせずに彼に訊ねた。

「涼太、ほんとに大学受験しないの?」
「しないよ。俺、専門学校行って美容師になるから」

あたしの問いかけに、涼太がキッパリと答える。

「涼太の従兄が美容師でお店持ってるんだっけ?涼太、1年のときからずっとそう言ってるよね」

亜未があたしと涼太の間に身を乗り出してきて、口を挟む。