目を閉じてその甘い香りを思い出していると、
「宮坂、何やってんの?」
いつのまにかずいぶん先を歩いていた冴島先生があきれ顔であたしを振り返っていた。
その背中に追いつくために慌てて駆け寄ると、彼が不意にあたしの肩の辺りをじっと見てきた。
「どうでもいいけど、その髪切ったのって木瀬?」
高校生のときとはまるで違って、別人みたいに短くなってしまった髪。その毛先に触れながら頷くと、冴島先生が「へぇ」と呟く。
それからあたしを見つめて、眩し気に目を細めた。
― Fin ―
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