あたしが通っていた高校は、駅を降りてから一戸建てが連なる住宅街をずっと突き抜けて、急勾配の坂道をひたすら登り続けた、その先の高台の上にある。
校舎に向かって右手が校庭。
左手には、創立何十周年のときだかに造った立派な碑と間隔を空けて植えられた木が数本。
校舎は昔よりも少し古ぼけた印象を与えるけれど、目の前にある光景は高校生だったときの記憶とほとんど変わらない。
でも高校まで続く急勾配の坂道を登ってくるのには、あのときの2倍くらいの時間がかかった。
黒のスーツにヒールのある黒のパンプスを履いてはいるけれど……
時間がかかったのは、自分のこの格好のせいだけではないと思う。
年とったな。苦笑いを浮かべながら、深い息をつく。
それから左手に並ぶ植樹に視線を向けた。
背の高い植樹の中に、中途半端な背丈であまり目立たない木が一本。それを見つけたあたしは、まだ花をつけていない地味な低木を見つめて微笑んだ。
あたしは少し変わったけれど、あの木はほとんど様子が変わらない。今が秋でないことが残念だ。