「大学行っても頑張れよ」
「はい。じゃぁ、失礼します」
満足にお礼の言葉を伝えられたあたしは、軽く会釈して踵を返す。
すっきりとした気持ちで昇降口に向かって歩き出そうとしたとき、
「宮坂」
冴島先生があたしを呼び止めた。
ゆっくりと振り返ると、屋上へ続く階段を上りかけていた彼がスーツの内ポケットからおもむろに何か取り出す。
そしてそれを何の予告もなく、あたしに放り投げてきた。
宙を舞ってあたしの元まで正確に飛んできたそれを、反射的に受け止める。
両手の中にすっぽり収まったものは、薄いピンクの包装紙がかかった長方形の小ぶりの箱だった。
「それ、卒業兼合格祝い」
「え?」
あたしに────?
両手の中にある箱に戸惑っていると、冴島先生が目を細めてあたしを見下ろしながら軽く右手をあげた。