「何?」
「あたし、大学合格しました」
「あぁ、柴崎先生に聞いて知ってる。よかったな」
冴島先生が、嬉しそうに、にやりと笑う。
「ありがとうございました」
あたしは冴島先生の顔をじっと見つめると、彼の前で勢いよく頭を下げた。
「何だよ、急に。俺は別に何もしてないし」
頭を低く下げたまま視線だけをあげると、冴島先生が戸惑ったように首筋を掻いているのが見えた。
「でも、いろんな意味で感謝してます」
顔をあげて冴島先生をまっすぐに見据える。
言葉を替えて改めてお礼を言うと、冴島先生が珍しく困ったような顔をしていた。
「俺のこと毛嫌いしてたかと思えば……変なやつだよな、お前」
「変なやつとか、先生に言われたくないです。ていうかあたし、別に先生のこと嫌いじゃないです」
「ふーん。それは知らなかった」
「今、初めて教えましたから」
ふてくされた声で言葉を返すと、冴島先生がクッと笑った。