高校2年生の春。
あたしは、教育実習生としてやってきた冴島先生のことが好きじゃなかった。
顔立ちが綺麗で整っていたけど、何だかチャラチャラした雰囲気で、ちっとも先生らしくなくって。いい加減そうな人だとずっと思っていた。
高校3年生の春。
あたし達の副担任として着任してきた彼のことも、やっぱり好きになれなかった。
いつも人を見透かしたような目で笑う。そういうところが不快でしょうがなかった。
彼に対して不快感を抱きながらも、彼が2年前の冬に公園で見かけた男の人だということはずっとわかっていて。心のどこかで、本当はいつもほんの少し気にかかっていた。
冴島先生に言葉で痛いところを突かれる度に腹をたてたりもしたけれど……
涼太のこと。放課後あたしに費やしてくれた時間。そういうことに、あたしはとても感謝している。