「何がおかしい」
「別に何も」

苦笑いするあたし達を、冴島先生が不服そうな目で睨む。

「それより大ちゃん、来年もうちの高校いるんでしょ?」
「あー、たぶん。急な異動がなければいるだろうな」
「じゃぁ、卒業してからもたまに学校に遊びに来るよ」
「あたしも!」

涼太と亜未がそう言うと、冴島先生は曖昧に笑った。

「そんなこと言ってるやつに限って遊びになんて来ないよ。俺もそんなこと言ってたけど、結局卒業したあとに来たのは1年前の教育実習のときだったし」
「そんなもんかな?」
「そんなもんだって。若いときは前に進むので忙しいもんなんだよ」

冴島先生が手にした煙草の箱を弄りながら、クッと小さく声をたてて笑う。