「何あれ……」

そんな彼女達を見る萌菜の目がちょっと怖い。

女子生徒数人を引き連れるように歩く冴島先生を見ていると、ちょうどあたし達のそばを通り過ぎるときに彼が面倒くさそうに口を開いた。

「あー、お前らいつまでもうるせぇな。俺はホワイトデーは本命にしか返さない主義なの! わかったら、とっとと教室戻れ」
「えー、それどういうこと?」
「じゃぁ、本命の女の子には返したの?」
「だから、教室行けって」

冴島先生が、思い思いのことを口々に訊ねる女子達の背中を追いやる。

不服そうに去って行く女子達を見送った冴島先生は、まだ立ち止まっているあたし達5人に視線を向けた。

「お前らも、教室戻れよ。最後くらい、ちゃんとしないとな」

冴島先生が、唇の端を引き上げてにっと笑う。

まともなことを言ってるわりに、その笑みはあまり教師らしくない。

呆れ顔を浮かべていると、冴島先生と目が合った。

慌てて目をそらした視界の端で、彼があたしを見ながらほんの少し目を細めたような気がした。