涼太の手から、四角いポラロイド写真を受け取る。
写真の隅に上履きで踏まれたようなあとがうっすらと残って見えたけど、それ以外は汚れもなく綺麗なままだ。
しばらく写真を見つめてから顔をあげると、涼太が片眉を下げて笑った。
「それ、結構前に大ちゃんに渡されたんだ。どこに落としてたんだろうな、恥ずかしい」
「冴島先生が?」
文化祭の日の告白のあと、先にあの場を立ち去った涼太は、あたし達ふたりのやり取りが冴島先生に聞かれていたことを知らない。
自分でもごまかしていた涼太への気持ちを冴島先生に言い当てられて憤ったあたしは、このポラロイド写真を落としたことも忘れてそこから立ち去ったけど。そのあと、彼がこの写真を拾いあげてくれていたんだ。
拾った写真をあたしではなく涼太に渡しているところに、冴島先生の意図を感じる。
さっき涼太に連れられていくあたしに笑いかけてきた冴島先生は、こうなることがわかっていたんだろうか。
何度か耳にした、「そりゃ、先生だしな」と言う冴島の言葉。
人の気持ちを見透かすような目をして笑う彼の顔を思い出して、苦笑する。