「俺、木瀬涼太。名前、なんて言うの?」
「宮坂紗幸希……」
「あ。名前もかわいい。ねぇ、紗幸希ちゃんのこと、サユって呼んでいい?俺のことは涼太でいいよ」
「はぁ……」
正直、どう反応すればいいかわからなかった。
何、このノリの軽い男……。
それ以上の感想を持てない。
クラス中の女子に、こんなこと言って回ってるの……?
そう思って呆れ返った。
だけど実際には、涼太が入学式の日に自分から馴れ馴れしく話しかけた女子は、あたしだけだったらしい。
「だって俺、どうしてもサユと知り合いになりたかったんだもん。クラス一……っていうか、たぶん学年一かな?お前の顔、俺の好みだったから」
だいぶあとになって涼太とその話になったとき。笑いながらなんの躊躇いもなくそう言われて、またどう反応すればいいかわからなかった。
そのときのあたしは、既に亜未の涼太への気持ちを知っていて。だから、余計に。かなり困った。