やっぱり、あげるべきじゃなかった。

亜未と一緒に涼太にあげるチョコを見に行った日。

ガラスケースに飾られたトリュフの小箱にかけられた金色のリボンを見て、冴島先生のことを思い出した。

それでつい、衝動的にそのチョコを買ってしまったのだけれど。そんな衝動にかられた理由や、こんなふうにわざわざチョコを渡しにきてしまっている理由が、自分でもいまいちよくわからない。

冴島先生の手の中にある小箱を、恨めしげにじっと見つめる。

すると彼が意識的か無意識にか、金色のリボンの先に指を絡めて巻きつけ、小さな声でつぶやいた。

「これ、綺麗な色だな」

視線をあげると、冴島先生は何かを思い出すように、懐かしげに目を細めて小箱を見つめていた。

彼の眼差しに、心の奥の方がほんの少し揺さぶられるような心地になる。