「今日は15ページの────」

他の授業と違って、冴島先生が話をしているときは、クラスのほぼ全員が顔を上げて彼のことを見ている。

ため息をつきながら、あたしも冴島先生が指示したページを開いた。

何気なく視線を動かすと、窓側の一番前に座っている涼太がちょうど机に顔を伏せるところだった。

授業開始早々、一番前の席で寝るつもりらしい。

やる気がないなら、なんで大学受験クラスを選択したんだろう。

寝やすい体勢に身体を丸めた涼太の背中を、呆れ顔で見つめる。

涼太と初めて話したのは、高校1年生の入学式のときだった。

教室で自分の席に座っていると、突然涼太がやってきてあたしの肩を叩いてきたのだ。

「ねぇねぇ。名前聞いていい?」

涼太は少しも躊躇うことなく、初対面のあたしに馴れ馴れしく話しかけてきた。

「はぁ……?」

不審げに見上げると、涼太が人懐っこい笑顔でにこっと笑う。