「だから、深い意味はないって」
素っ気ない声で答えながらも、ひさしぶりに見る涼太の笑顔にあたしは少しほっとしていた。
「あ、涼太。あたしのは、深い意味あるからね」
亜未があたしの前に身体を乗り出して、冗談混じりに笑う。
「あー、そっか」
涼太は片眉を垂れて苦笑いしたあと、あたしと亜未のチョコを受け取った。
それから「ありがと」と言って、人懐っこい笑顔を見せる。
「サユも亜未も、受験まだ残ってんだろ? 無事終わったら遊ぼう。上原も誘って」
「うん、遊ぼう」
涼太の言葉に、亜未が嬉しそうに頷く。
「サユも、遊ぶだろ?」
あたしが黙っていると、涼太が少し不安そうに訊ねてきた。
涼太の言葉に小さく頷くと、彼が嬉しそうな目をして笑う。
その笑顔見たあたしは、今まで応えられずに涼太の気持ちに少しくらいは応えられたような気がして。ひとりで勝手にほっとしていた。