バレンタインデー当日。あたしと亜未は、放課後になってからふたりで涼太を呼び出した。

「ふたりして、何?」

訝しげな顔をしながらついてきた涼太が、あたし達を交互に見比べて首を傾げる。

あたしと亜未は顔を見合わせて目配せすると、ほとんど同じタイミングで涼太にチョコを差し出した。

「これ。今日、バレンタインデーだから」

亜未に言われて、涼太がぽかんとした表情で目の前に差し出されたチョコを見つめる。

「え……?」
「言っとくけど、別に深い意味はないよ。最近、なんかいろいろ気まずかったし。卒業控えてそういうのも嫌だから。これでチャラね」

あたしが若干のふてぶてしさを含む口調でそう言うと、ぽかんとしていた涼太がふっと笑った。

「深い意味、ないんだ? こんなんもらったらちょっと期待するんだけど」

冗談っぽくそう言って、涼太が頬を緩める。