「涼太に?」
「そう。あたし、まだ完全に諦めたわけじゃないからね」
亜未の目がいたずらっぽくキラリと輝く。
亜未らしい前向きさと、その表情に軽く吹き出しそうになったとき、職員室から誰かが出てきた。
「宮坂、武田。まだ残ってたのか。職員室前で何やってんの?」
聞こえてきたのは、ちょっと面倒臭そうな声。
振り向くと、冴島先生が煙草の箱をズボンのポケットに押し込んでいた。
「あ、大ちゃん。学校で煙草吸っていいの?」
「喫煙スペース使えばいいんだよ。先生だからな」
亜未の問いかけに、冴島先生がなんともいい加減な言葉を返す。
「何それ」
クスクス笑う亜未のそばで、あたしはいい加減な発言をする彼を冷めた目で見上げた。