頭をさげるあたしに、亜未は何も言わない。
続く沈黙。だけど、それを打ち破ったのは亜未の明るい笑い声だった。
「いいよ、そんなの。紗幸希にはそういうの似合わない」
「先に頭さげたのは亜未じゃない」
「そうだけど」
視線をあげると、亜未が笑いながら指先で目尻を擦るのが見えた。
あたしが視線をあげたことに気づいた亜未が、口角を引き上げる。
その笑みに応えるようにあたしも唇の端をうっすらと引き上げた。
これは、和解の合図と受け止めていいんだろうか。そう思っていたとき、亜未があたしに誘いかけてきた。
「紗幸希、買い物行こうよ。もうすぐバレンタインデーでしょ? 今年は受験で手作りしてる余裕なんてないから、一緒に買いに行かない? 涼太にあげるチョコ」