亜未と涼太とは気まずいまま時がすぎ、あっという間に受験のシーズンがやってきていた。

「宮坂、私立も何個か受験するんだろ?」
「はい、本命は公立だけど」
「そっか。じゃぁ、滑り止め落とさないように頑張れよ」

いつのまにか放課後の日課のようになってしまった質問を終えると、冴島先生が唇の端を片方だけきゅっと引き上げた。

以前はその笑い方にあまり好感が持てなかったけれど、最近はその笑い方を見る度に頑張らなければ……と思う。

あたしのために、放課後時間を割いてもらっているからだろうか。

絶対に彼に好感は持てない。そう思っていたはずなのに不思議だ。

「ありがとうございます」

問題集を閉じて立ち上がりざまに頭を下げる。

そのまま踵を返していつも通り立ち去ろうとすると、

「あー、宮坂」

冴島先生が珍しくあたしを引き止めた。