「今の紗幸希が好きなのは、涼太なのかな……?だけど、最近の紗幸希って大ちゃんとも仲良さそうだし。もしも紗幸希の中で新しく特別な想いが生まれたときは、あたしには遠慮しなくていいから」
遠慮しなくていい。そこまで聞いて初めて、あたしは萌菜が言わんとしていることの意味を理解した。
「まさか」
萌菜が言いたいのはつまり、もしあたしが冴島先生のこと好きなら……、ってことだよね。
冴島先生の顔を思い浮かべながら、大きく首を横に振る。
「紗幸希、あたしが涼太のこと好きか聞いたときも同じような反応してたよ」
「だって、先生だよ?」
眉を寄せながらそう言うと、萌菜は真面目な顔つきであたしを真っ直ぐに見つめた。
「先生だけど……でも、感情は時々常識も理性も飛び越える。だから紗幸希はまだ亜未と仲直りができてなくて。涼太とも気まずいままでいるんでしょ?」
真剣な目をした萌菜に問われて、あたしは彼女に言葉を返せなかった。