「大ちゃんは教職目指してたから、あたしが中3のときに家庭教師してもらってたの。だから、大ちゃんが去年の教育実習に来る前から、あたし達知り合いだったんだ」
「そうなんだ」
「家庭教師してくれてたとき、大ちゃんはお姉ちゃんの彼氏だったんだけど……あたし、大ちゃんが好きだった」

萌菜がそう言って、自嘲気味に笑う。

冴島先生が「好きだった」と言う萌菜は、今だって彼が好きなのだ。

自嘲気味に笑いながらも、切なさを宿した彼女の瞳が、そのことをあたしに訴えてくる。

「お姉ちゃんね、2年くらい前に大ちゃんと別れたの。同じ大学出身で、同じように教師やってた先輩に『結婚前提に付き合ってほしい』って言われたんだって。大ちゃん、お姉ちゃんよりもずっと年下だったから、将来とか考えると不安だったのかな……」

それは、あの冬の日のことだろうか。

あたしが黙っていると萌菜が言葉を続ける。