「お姉ちゃんって……?」
「大ちゃんね、あたしのお姉ちゃんの元カレなんだ。ここだけの話なんだけど、あたしのお姉ちゃん、3年前までうちの高校で国語の教師しててね、大ちゃんはお姉ちゃんの生徒だったの」
2年前の冬の日に見た、淋しそうに目を伏せていたショートヘアの女の人。冴島先生から聞いた、彼女の印象。それから銀木犀の花言葉。
それらがあたしの頭の中で纏まって、ひとつのはっきりとした像を描く。
あの人が、萌菜のお姉ちゃん────?
「あ、生徒だったっていっても、付き合い始めたのは卒業してだいぶ経ってからだよ」
黙り込むあたしを見て何を思ったのか、萌菜が言い訳でもするように焦って言葉を付け加える。
「うん」
あたしが頷くと、萌菜が少し口元を緩めた。