「涼太のどこがいいの?」

亜未の横顔を冷めた目で見つめていると、涼太からあたしに視線を戻した彼女が口元を綻ばせて幸せそうに笑った。

「全部」

亜未から返ってきた回答に、何だか首筋がかゆくなる。

「へぇ、そう」

素っ気ない言葉を返すあたしを、亜未が不服そうな目で見てきた。

「じゃぁ、紗幸希は涼太のどこがダメだって言うのよ」
「全部」

即答すると、亜未がクスクスと笑った。

「それ聞いたら、涼太泣くよ?」
「知らない。だって、あいつチャラいんだもん」

冷めた目をするあたしを見て、亜未が安心しきった顔でクスクスと笑い続ける。

「おい、お前ら。もう授業始まるから教室入れ」

廊下から冴島先生の声が聞こえてきた。