上で誰かがケンカでもしているんだろうか……

聞こえてきた叫ぶ声に、心臓がドクンと跳ね上がりそうになる。

驚かされた衝撃でドキドキしている胸を手の平で押さえたとき、また女の子の声がした。
 
「ねぇ、大ちゃん────!」

聞こえてきた名前に、今度はさっきとは違う意味でドキリとした。

冴島先生が上にいるんだ。だけど一体、誰と一緒に────?

ほんの少し、興味が湧いた。

階段を降りるのをやめて踊り場の陰からそっと上を覗き込むと、屋上に続くドアにもたれかかるようにして、冴島先生が立っている。

あたしが隠れた場所から見える彼は、珍しく少し困ったような顔をしていた。

彼と向かい合うようにして、立つのは制服を着た女子生徒。横顔に見覚えがあると思ったら、その女子生徒は萌菜だった。