職員室を出てから手元の問題集を見遣り、どうしようかと考える。

今日はこのまま帰ろうか。それとも……

屋上に続く階段に行けば、煙草を吸う冴島先生に会えそうな気がして、あたしは一応そこに寄ってから帰ることにした。

薄暗くて埃っぽい屋上側の階段は、下から見る限り、その上に人がいるかどうかはわからない。

階段に足をかけ、文化祭の日に涼太に手を引かれて連れて来られた踊り場まで上がってきたとき、ふと誰かの話し声が聞こえてきた。

聞こえてきた声が女子のものだったような気がして、足を止める。

屋上は鍵がかかって入れないのに。こんな埃っぽい場所に、生徒が上がってくることがあるんだ。

珍しいなと思いながら、屋上へ続く上の階段をちらっと覗き見る。そこにふたつの人影が見えて、あたしはそれ以上上へと進むことをやめた。

「そんなふうに誤魔化さないで、本気で聞いてよ!!」

質問は諦めて帰ろう、と階段を下りかけたとき、今度は女の子が叫ぶ甲高い声がはっきりと聞こえてきた。