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「あの、冴島先生は……?」
放課後。いつものように問題集を持って職員室を訪れると、冴島先生がいなかった。
近くにいた隣のクラスの担任に声をかけると、「さぁ?」と首を傾げられた。
「そうですか。ありがとうございます」
「宮坂も質問か?」
また屋上前の階段で煙草でも吸っているのだろうか。
そんなことを考えながら眉を顰めたとき、隣のクラスの担任があたしに問いかけてきた。
「あぁ、はい」
「そうか。さっき他の女子生徒も質問があるとか言って冴島先生のこと探してたぞ。モテるなぁ、冴島先生。俺のとこなんて、ほとんど誰も質問に来ないのに」
「はぁ……」
隣のクラスの担任の自虐的発言に困っていると、彼の向かいに座っていた女性の先生が苦笑いを浮かべた。
「先生、生徒相手に何言ってるんですか。宮坂さん、困ってますよ」
「あぁ、そうか。悪い、悪い。宮坂、勉強頑張れよ」
「あぁ、はい」
あたしは苦笑いを浮かべると、鞄と問題集を胸に抱えて職員室を出た。