「教育実習で来てたときから思ってたんだけど、大ちゃんの教え方ってわかりやすくない? 解説が丁寧。あたし数学苦手だったんだけど、大ちゃんの授業を真面目に聞くようになってからだんだんわかるようになってきた。かっこいいし、教え方うまいし。非のつけどころがないよね」
視線を少し上げながら、亜未が冴島大輔をほめちぎる。
「あいつから冴島先生に乗り換えることにしたの? 冴島先生のほうが、絶対競争率高いよ」
そう言いながら、廊下で上原くんや他のクラスメートの男子と談笑している涼太にちらりと視線を向ける。
あたしにつられるように廊下に視線をうごかした亜未が、恥ずかしそうにほんのり顔を赤くした。
「それは全く別問題」
「ふぅん」
あたしと亜未の視線に気づいた涼太が、こっちを見てにこっと笑う。
「あんまり見てたら、勘違いされる」
微笑む涼太を冷たいまなざしで見つめてから、顔をそむける。
「あたしはむしろ、勘違いしてほしい」
あたしが顔をそむけた後も、亜未は涼太に熱い視線を送っていた。