「俺も、困らせてごめん」
涼太が切なげな声でそう言って、あたしの手を離す。
涼太が謝ることじゃない。
あたしが小さく首を横に振ると、涼太がため息をつくみたいに笑った。
「そういえば、サユ。最近放課後になったらいつも大ちゃんのとこに質問行ってるだろ」
「あぁ、うん。待っててくれたんだよね、ごめん……」
授業後のSHRが終わってから、もう随分と時間が経つ。
放課後すぐに職員室へ消えたあたしを、涼太はだいぶ長い時間待っていてくれたはずだ。
それなのに、涼太にきちんと向き合う準備ができていないあたしは、なんだかとても申し訳ない気持ちになった。
後ろめたさを感じて目を伏せると、涼太が皮肉っぽく笑う。
「サユ。最近ほんとに熱心に職員室に通ってるよな。大ちゃんのこと、嫌ってなかったっけ?」
「え?」
「いつの間に仲よくなったの?」
問いかけてくる涼太の声には、心なしか棘があるような気がした。