ひさしぶりに声をかけてきた涼太は、いつもみたいに人懐っこい顔で笑いかけてはこない。
どこか困ったような目をしてあたしを見ていた。
「な、に?」
緊張気味に声をかけると、涼太が片眉を下げて弱々しく笑う。
「急に呼び止めてごめん。最近全然サユと話してないから」
「うん」
「亜未も、何か変だし」
涼太らしくない歯切れの悪さで、彼がぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
俯きながら涼太の言葉にひとつひとつ小さく頷いていると、彼が歩み寄ってきてあたしの手をつかんだ。
涼太の体温がいきなり触れて、反射的に身体を仰け反らせる。そのまま後ろに身を引こうとすると、涼太があたしの手をぐいっと引っ張った。
「サユ、顔上げて。ちょっとだけ聞いて」
涼太が切羽詰まったような声を出すから、それを無視できなくてほんの少し視線を上げる。
上目遣いに見あげたあたしを、涼太は切なげに、それからとても真剣な目でじっと見ていた。