冴島先生に軽く会釈すると、挨拶代わりに萌菜にも少し微笑みかける。
「先生、ここなんですけど……」
けれど、萌菜はあたしの笑みには気づかなかったのか、すっと顔をそらして冴島先生に話しかけ始めた。
確かに目が合ったような気がしたんだけど……、気のせいかな。
あたしは職員室を出ると、そこから一番近い階段を降りて昇降口に向かった。
「サユ」
下駄箱の中のローファに手を伸ばしかけたとき、不意に後ろから名前を呼ばれた。その呼び方に、心臓がとび出しそうなほどドキリとする。
「サユ」
すぐに振り向けずにいると、催促するようにもう一度名前を呼ばれた。
どうしようもなくなっておそるおそる振り返ると、予想通り、涼太が立っていた。